スプリングワッシャーの役割とゆるみ止めを活用するポイントを知ろう

投稿日:2025年03月10日

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スプリングワッシャー(ばね座金)は、締結部品の緩みを抑えるために多くの場面で採用されています。シンプルで汎用性が高い一方、その特性やJIS規格に基づく設計・選定のポイントを正しく理解することが、より高い信頼性を確保するための鍵となります。

設計者の悩みとして、「スプリングワッシャーは、何を使用すればいいのか分からない」という、声をよく聞きます。

スプリングワッシャーは緩み止め対策として用いられる反面、過去の使用実績に応じて、ワッシャーの型式を選定することが多い為、経験則が通じない新規の装置設計であれば、悩むのも当然です。

機械設計を行う際に、「これは平ワッシャーではなく、スプリングワッシャーを使用した方がいいのかな」と感じ取れるようになるには、スプリングワッシャーの正しい理解が必要不可欠です。

本記事では、JIS規格で規定される種類や材料等の特徴を紹介し、スプリングワッシャーの役割やボルトが緩むメカニズムを解説します。

このコラムを書いた人

機械系プラントエンジニア
国内化学プラントで機械設計や建設工事を10年以上経験。危険物製造設備、発電・ボイラ設備・排水処理設備、研究施設の多種多様な設計・調達・工事に携わり、その知識をコラムにて発信中。現場でも活かせる専門知識を、日本のモノづくりに活かしてもらいたい!という強い思いを持っている。

スプリングワッシャー(ばね座金)とは

スプリングワッシャーは、ボルトやナットと締結対象の母材との間の座面に挟むことで、ねじの緩みを防止する為のリング状の部品です。

ボルトとナットで締め付けることにより、スプリングワッシャーが変形し、その反発力が緩み止めとして作用します。その他にも、凹凸面や歯がスプリングワッシャーについているものもあり、それを食い込ませることで緩み止めを行うこともできます。

スプリングワッシャーはJIS B 1251で規定されており、形状や用途、材料によって分類されています。

スプリングワッシャー(ばね座金)の役割

振動や衝撃が繰り返し加わる箇所や、熱膨張等の変形をともなう箇所をボルトナットで締結する場合、しばらくするとボルトが緩んでしまうといった現象が起きてしまいます。

スプリングワッシャーは、このような条件下でも締結力を維持し、振動や変形の影響を緩和することができるのです。長時間連続で運転するような機械の安定運転に寄与する重要な役割を持っています。

ボルトがゆるむ原因

ボルトの緩みは、何らかの外力が働いてねじ部が回ってしまうことで緩んでしまう「回転緩み」と、母材やねじ部等の変形伸縮によって緩んでしまう「非回転緩み」に分類されます。

ボルトの緩み止めの対策を考える際は、まず「回転緩み」と「非回転緩み」のどちらを防止したいのかを考えることから始めるとよいです。

回転緩みが起きる原因

回転緩みは、振動や衝撃などの外力により、締結部品が微小に回転することで発生します。締結部品の接触面が滑り始めると、摩擦力が低下し、ボルトやナットが回転を開始することで軸力が失われます。

回転緩みが起きる原因は以下の通りです。

①振動による摩擦力低下

振動が接触面に繰り返し加わることで、摩擦力が断続的に減少し、回転緩みを誘発します。

②衝撃荷重

外部からの衝撃で軸力が瞬間的に変動し、摩擦力が不足することで回転が進行します。

非回転緩みが起きる原因

非回転緩みは、締結部品の軸力が低下することにより発生します。軸力が減少すると摩擦力も低下し、締結部が緩む原因となります。

非回転緩みが起きる原因は以下の通りです。

①熱膨張と収縮

温度変化による膨張率の差で、異種材料間の締結部で軸力が変動します。

②クリープ現象

樹脂や柔らかい金属を締結している場合、時間経過とともに材料が塑性変形し、軸力が低下します。

スプリングワッシャー(ばね座金)を効果的に使うには

スプリングワッシャーを使用しても必ず緩み止めができるとは限りません。正しい形式・材料等の条件を満たすことで、スプリングワッシャーの効果が発揮されます。

スプリングワッシャーの効果を最大限に引き出すには、以下の点を考慮しましょう。

締付トルクの管理

設計条件に合った締付トルクで取り付けることが重要です。必ず、ワッシャーを使用する場合は、締付トルク管理が必須であると覚えておきましょう。

適切な種類とサイズを選択

JIS規格で規定された用途や負荷条件に基づき、適切な種類とサイズを選定します。特に、振動や衝撃が多い環境ではボルトの強度区分を上げて、重負荷用(3号)を検討しましょう。

スプリングワッシャーは様々なタイプのものが市販されており、JIS B 1251に規格化されています。ここでは代表的なタイプをいくつか紹介します。

①汎用のスプリングワッシャー(SW)

引用元:JIS B 1251

スプリングワッシャー(SW)

引用元:モノタロウ

標準的な締結部に使用される一般的なスプリングワッシャーで、ねじの強度区分に合わせて一般用(2号ワッシャー)と重負荷用(3号ワッシャー)の2種類が存在しています。

  • 一般用(2号ワッシャー)・・・ボルト強度区分4.8相当(ナット強度区分5相当)
  • 重負荷用(3号ワッシャー)・・・ボルト強度区分8.8相当(ナット強度区分8相当)、一般用に比べて厚みがあり、高い弾性力が得られる。

②皿ばねワッシャー(〇L、〇H)

引用元:JIS B 1251

皿ばねワッシャー

引用元:モノタロウ

皿型ワッシャーの取付

皿型の板ばね形状のワッシャーで、押しつぶすことで面全体に均一なばね弾性力が作用します。

取り付ける場所が座ぐりの中かどうかで、1種と2種に区分され、それぞれで軽負荷用と重負荷用が規格化されています。

  • 1種軽負荷用(一般用)・・・1L
  • 1種重負荷用(一般用)・・・1H
  • 2種軽負荷用(座ぐり穴を利用するタイプ)・・・2L
  • 2種重負荷用(座ぐり穴を利用するタイプ)・・・2H

③歯付きワッシャー(TW)

歯を外側又は内側につけ、その歯が母材に食い込むことで、滑り止め効果を高めているワッシャーです。振動や回転により緩むリスクが高い場所に用いられることが多く、平ワッシャーと併用すると、緩み止め効果が薄くなる場合があるため、注意が必要です。歯付ワッシャーにも様々な種類があります。

引用元: JIS B 1251

歯付きワッシャー

引用元:モノタロウ

引用元:モノタロウ

  • 内歯型(記号:TWA)・・・内側に歯が付いた形状のワッシャー
  • 外歯型(記号:TWB)・・・外周側に歯が付いた形状のワッシャー
  • 皿型(記号:TWC)・・・皿小ねじ用のコニカル型状のワッシャー
  • 内外歯型(記号:TWAB)・・・外周と内側に歯が付いた形状のワッシャー

④波型スプリングワッシャー(WW)

引用元: JIS B 1251

波型スプリングワッシャー

引用元:モノタロウ

スプリングワッシャーを面でねじり、波型の形にしたワッシャーです。ばねの反力が大きく、締結部の圧力が当り部の4か所に均等に分散されます。重荷重用(3号)のワッシャーとしてJISでは規定されています。

材質の選定

使用環境(腐食、耐久性、電気的特性など)に応じて、鋼、ステンレス鋼、りん青銅から適切な材質を選択します。

スプリングワッシャーは母材にわずかに食い込むことで回転緩みを防止できるため、材質は硬くなければいけません。その為、JISでビッカース硬さ又はロックウェル硬さが細かく規定されています。

なお、スプリングワッシャーの材質としてJISで規定されているのはたったの3つのみです。

鋼(記号:S)

特徴:コストパフォーマンスに優れ、広範な用途に使用されます。
用途:一般的な機械設備や軽負荷の環境に使用します。

ステンレス鋼(記号:SUS)

特徴:耐食性に優れており、屋外沿岸地域や腐食環境に適しています。
用途:海洋設備や化学プラントなど、耐久性や腐食性が求められる環境に用いられます。

りん青銅(記号:PB)

特徴:ばね材に適した材料で、耐摩耗性を持ちます。表面にメッキを施したものが多いです。
用途:高い耐久性とばね弾性を得たい際に使用します。

平ワッシャーとの併用の注意点

平ワッシャーとスプリングワッシャーを併用する場合は、非回転緩みの防止であることが多く、回転緩みの防止で用いると、かえって緩みやすくなることがある為、注意が必要です。

スプリングワッシャーでは緩み防止ができない場合もある

母材の熱による伸縮量が大きい場合や長期運転が要求される回転機では、スプリングワッシャーではどうしても緩み防止ができない場合があります。

そういう場合は、スプリングワッシャーではなく、ノルトロックワッシャーなどの特殊なワッシャーやねじ緩み止めの接着剤を試した方がよいかもしれません。

スプリングワッシャー(ばね座金)の役割まとめ

スプリングワッシャーは、JIS規格に基づき分類されるさまざまな種類と材料が用意されており、回転緩みと非回転緩みの両方を抑制するための重要な部品です。

その特性を正しく理解し、設計条件に応じて選定するだけでなく、実際に使用した結果も含めて実績を積むことが大切です。

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