投稿日:2022年02月23日
メカトロ設計の動力制御として、なくてはならないのがインバータです。
モータの速度を制御する際に必ず必要になる、という漠然とした理解をしている設計担当者も多いかもしれません。
複雑な装置の設計を行う際に、
インバータの基本的な構成と役割を理解しているとより高度な設計を行うことができるでしょう。
モータ速度調整の必需品 インバータ
モータの動力電源とモータ線の間にインバータが設置されている配線系統図を見ることが多いでしょう。インバータの主な役割はモータの速度調整を行うことです。
モータに電源を接続し、電気を供給すると、モータは一定速度で回転します。
交流モータであれば、既定の電圧と規定の周波数(商用であれば50/60Hz)が入力されると、それに相当する回転速度で回転します。
スイッチをオンにするといきなり高速回転数で運転を始めますので、機械によっては工夫が必要です。
起動トルクが大きい機械設備などには、起動直後に低速でゆっくり起動するような機構を取り付ける必要があるでしょう。
それに対してインバータは商用電源を投入して定格回転数で常時運転をする他にも、決められた回転数の範囲であれば、回転速度を調節することが可能となります。
さらに起動停止時に、設定回転数になるまでの加速、減速時間を設定することができます。
それにより、起動トルクの大きな機械設備に対しても、モータはゆっくりと設定回転数に加速し、停止時もゆっくりと減速を行うことが可能なのです。
インバータでは周波数を変えている
インバータではどのようにしてモータの回転数を変えているのでしょうか?
モータの回転数決定のパラメータに入力電源の周波数があります。
インバータによって、モータへ供給する電源の周波数を増減させることにより、モータの回転数を増減させることが可能となりました。
インバータは商用電源を入力すると、内部で一旦直流電源に変換します。
その後、要求された周波数の電源にするために直流電源を高速スイッチング処理により、交流を疑似的に作り出し、モータの回転数に応じた周波数の交流を作り出しています。
直流のスイッチング速度を調節すれば、商用電源周波数(50/60Hz)以上の周波数の電気をモータへ供給することができる。これにより、モータの高速回転を行うことができるのです。
高速スイッチングによる直流切り出しの影響
モータの速度制御に関しては、万能のように見えるインバータです。しかし、インバータを導入したことによる様々な弊害も確認されています。
最も大きな問題は電源への高調波の流出です。
高調波とは、インバータによる高速スイッチング処理を行うことで発生する商用周波数の整数倍の高周波電流のことです。
高調波はインバータ1台から出る量は微量ではありますが、複数台設置された工場などで、受電設備の破損などが発生した事例もあります。
現在、高調波はインバータを設置する事業所ごとの契約電力によって許容量が定められています。
インバータの付属品である交流リアクトルの設置や、高調波抑制コンバータの設置により、インバータからの高調波流出を抑えることができます。
また、今までインバータが設置されていなかった事業所でインバータを導入するとラジオノイズによる計装機器への影響なども発生することも知られています。
商用電源の整数倍の高調波は、非常に高い周波数のものも微量存在し、そういった高調波が電波になって計装機器の信号ラインに混触することで問題が発生します。
これにはラジオノイズを発生させない零相リアクトルの設置や、計装機器の信号ラインにノイズフィルタを入れるといった対策が取られます。
インバータはメカトロ設計では非常に便利な機器ではありますが、きちんとした対策と取らないと、全く関係のない外部に思わぬ影響を起こす可能性もある機器でもあります。
まとめ
インバータが一般に普及する前は、機械速度の調整は機械設備で行うことが常識でした。
それまではモータプーリや減速機付きモータといった機器を用いて回転数を調節していました。
しかし、インバータの登場により、手軽に回転数の調節を行うことができるようになりました。
それにより機械の小型化や、回転数を下げることによる省エネ化が図られました。
インバータは電気系統に対する影響もありますが、上手く対策をとることで、その機能を最大限に生かすことができるのです。