投稿日:2024年09月09日
配管エンジニアは、管内の流体やプロセスを理解して、配管の安全性や効率性を向上させる為に、適切なフランジを選ぶことを求められます。しかし、さまざまなフランジの規格が存在し、それぞれの特徴や用途を理解することは、初心者にとってなかなか難しいかもしれません。
本記事では、フランジの基本的な概念から主要な規格まで解説していきます。また、RF、FF、MF、TG、RJ、WN、SOP、SOHなどのフランジの仕様で用いられる記号についても説明します。
フランジとは何か
フランジは、配管や機器の接続部に使用されるツバ形の金具で、ボルトやナットを使用して接合される機械要素です。フランジは以下のような目的で使用されます。
- 機器同士をボルトナットで接続固定ができ、取り外しを容易とする。
- ガスケットを用いて漏洩なく、パイプや容器などとの接続を行う。
本書で説明を行うフランジは、後者の流体が流れる配管をつなぐ目的で使用するフランジを指しています。
フランジの基本構造
フランジは主に以下の部分から構成されており、この部分をどのように選択するかを配管エンジニアは考えなければいけません。
- ランジ形状・・・規格で決まった形状のフランジを規格フランジと呼びます。
- ボルトとナット・・・締め付け力に合わせて設計します。
- ガスケット面・・・ガスケットに合わせたシール部(ガスケット面)の形状を決めます。
- フランジと配管の接続部分・・・取り付け方に合わせてフランジのネック部の形状を決めます。
主なフランジの種類
フランジには多くの種類がありますが、主なものを以下に紹介します。
スリップオンフランジ (Slip-On Flange、略記号:SO)
スリップオンフランジ(SO)は、配管の端部にスライドさせて差し込んで装着し、溶接して隅肉溶接で固定するタイプのフランジです。
スリップオンフランジには、配管を溶接する部分にハブの有無を表すSOP型(ハブ無)とSOH型(ハブ有)の2種類のフランジがあります。
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【特徴】
- 溶接が容易にできる。
- 汎用品として流通しており、フランジコストが比較的安価。
ラップジョイントフランジ (Lap Joint Flange、略記号:LJ)
ラップジョイントフランジ(LJ)は、配管の端部にあるラップジョイントスタブエンドと組み合わせて使用されます。遊合型フランジとも呼ばれています。
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【特徴】
- 配管の取り外しが容易。
- フランジの回転が可能(ボルト穴の位置を気にせずに、フランジの取付ができる)
ネジ込みフランジ (Threaded Flange、略記号:TR)
ネジ込みフランジ(TR)は、配管の端部にねじ山が切られており、ねじ込むことで接続します。溶接を必要としないため、取り付けが容易です。
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【特徴】
- 溶接が不要なので配管工事が安価にでき、メンテナンスが容易となる。
- 低圧および小径の配管に適している。
- 漏洩のリスクが他の溶接フランジに比べて高い為、危険物や高圧ガスを使用する際に制限(法規制)がある。
ウェルドネックフランジ (Weld Neck Flange、略記号:WN)
ウェルドネックフランジ(WN)は、長いテーパー付きのネックがあり、配管の端部に突合せ溶接して接続します。
【特徴】
配管側に開先加工を行う手間が必要となる反面、フランジへの加工をせずに完全溶け込み溶接で配管と接続ができるため、他のフランジ規格に比べ高圧および高温に適しています。
フランジのガスケット面形状と記号
フランジには、ガスケットを挟んで漏れを防止するのに適したいくつかのシート面形状があります。それぞれに対応する記号と合わせて紹介します。
RF (Raised Face)
RFは、突起のある座面のあるフランジを意味します。突起部分がガスケットの圧縮を助け、シール性能を向上させます。一般的に使用されるガスケット面の形状です。
FF (Flat Face)
FFは「平面座フランジ」を意味します。突起がなく、平面の全面でガスケットを押し付けてシールします。
RFフランジに比べ、ガスケットシート面に加わる面圧は小さくなります。その為、低圧の流体に適しており、内部流体が漏洩しても危険性のない水や空気などの場合に良く利用されます。
MF (Male-Female)
MFは「雄雌フランジ」を意味します。雄側と雌側がペアで使用され、突起とくぼみが一致することでシール性能を高めます。
TG (Tongue and Groove)
TGは「タング&グルーブフランジ」を意味します。舌部(タング)と溝部(グルーブ)が合わさることで、精密なシールを実現します。
RJ (Ring Joint)
RJは「リングジョイントフランジ」を意味します。リング型のガスケットを使用し、高圧および高温環境で優れたシール性能を発揮します。
主要なフランジ規格(JIS、JPI、ANSI)に関して
フランジの規格は、世界各国の標準化団体によって定められています。フランジの規格はどこを見ればわかるの?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、規格フランジはフランジの外側に規格名が刻印されていることが多いのでぜひ確認してみてください。
また、規格に出てくる「呼び圧力」や「材料グループ」などの独特な用語も確認しておきましょう。
JISフランジ
まずは、日本のJISフランジについて説明します。
JISフランジには以下の4種類の規格があります。その中でも主に用いられている規格は「JIS B 2220」です。
規格 | 主な材質 | 材質 |
JIS B 2220 | 鋼製フランジ | SS400, SUS304, SCS13A |
JIS B 2239 | 鋳鉄フランジ | FC250, FCD450 |
JIS B 2240 | 銅合金 | CAC406 (BC6) |
JIS B 2241 | アルミニウム | A5083 |
JISフランジには「区分」と呼ばれるIからⅢに応じた、最高使用圧力と温度の条件があります。
その区分は、Ⅰが一番最高使用圧力が高い(強度がある)フランジとして規定されており、以下の「呼び圧力」「材料グループ番号」「フランジ形状」によって決められています。
「呼び圧力」・・・5k、10k、16k、20k、30k、40k、65kの圧力クラスがあり、それぞれ「〇〇キロフランジ」と呼びます。
「材料グループ番号」・・・規格フランジの材質をグループにしており、SS400は、「001」、SUS304は「021a」という番号が割り振られています。
「フランジ形状」・・・SOPやSOH、LJ、WNなどの形状と材料グループによって適用できる区分が決まっています。
ANSIフランジ
ASME(American Society of Mechanical Engineers)およびANSI(American National Standards Institute)のB16.5規格は、1/2インチから24インチまでのフランジの設計、寸法、材質を規定しています。
このフランジは、主にアメリカで使用されており、2つの規格で承認されていますが、日本国内では「ANSIフランジ」と呼ばれています。
JPIフランジ
JPI-7S-15(石油工業用フランジ)には、ANSIフランジ(ANSI/ASME B16.5)を参考にして、日本向けに制定されたフランジです。
その為、JPIフランジとANSIフランジには互換性が多くみられます。見た目はそっくりなANSIフランジとJPIフランジですが、ガスケットを挟むシート面に違いがあります。
圧力クラスは、150lb、300lb、400lb、600lb、900lb、1500lb、2500lbの圧力クラスがあり、それぞれのクラスを「JPI○○ポンドフランジ」と呼びます。
ANSIフランジにはセレーションと呼ばれる凹凸面(細かい同心円溝加工)がついており、JPIフランジにはついていません。
セレーションの有無によって使用できるガスケットの種類も異なるため、どちらのフランジなのかをきちんと認識して取り付けるようにしましょう。
その他のフランジ規格についても紹介しておきます。
APIフランジ
API(American Petroleum Institute)の6A規格は、石油およびガス産業で使用されるフランジを対象としています。特に高圧環境で使用することが多いのが特徴です。
圧力クラスは、2000、3000、5000、10000、15000 psiなどの高圧クラスがあり、材質には、高強度の合金鋼が主に使用されます。
DINフランジ
DINのEN 1092規格は、ヨーロッパで広く使用されているフランジの標準規格です。
以下の特徴があります。
圧力クラスは、PN6、PN10、PN16、PN25、PN40、PN63、PN100、PN160、PN250、PN400という表記をしています。
フランジの表記法
フランジの仕様を表記する場合はどのようにすればいいのでしょうか?
「規格+圧力クラス+配管との接続部分+座面」で表現することが多いです。
例:JIS10k SOFF、JPI300lbSORF
まとめ
フランジは配管材料において欠かせない部品であり、配管エンジニアは、その選定や取り付けには細心の注意が必要です。
この記事では、主要なフランジの種類や規格について詳しく解説しました。また、RF、FF、MF、TG、RJ、WN、SOP、SOHなどの記号についても説明しました。
初心者の配管エンジニアの皆さんが、適切なフランジを選び、安全かつ効率的に配管システムを構築するための参考になれば幸いです。
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