はめあい公差H7とは?なぜこの公差が良く使われているのか解説!

投稿日:2024年12月25日

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図面初心者は、「H7って何の記号なの?」と思うことが多いかもしれません。図面には多くの記号が並んでいて、それぞれが何を意味しているのか理解するのは難しいですよね。

私自身も、設計を始めたばかりの頃、H7という言葉をよく耳にしていましたが、その意味に疑問をもった経験があります。しかし、こうした記号を理解することは、図面を読み解き、正確に部品を設計するために非常に重要です。

このコラムでは、はめ合い公差H7について初心者にも分かりやすく説明し、悩みを少しでも解消できるようにします。

はめ合い公差H7とは?

H7は、機械部品の寸法を決めるための基準の一つで、部品同士がしっかりと噛み合うように設計されるものです。例えば、軸と穴の取り付けでよく使われます。

H7は公差、つまり許される誤差の範囲を示しています。例えば、Φ30 H7の場合、穴の直径は30mmで、その誤差は30.000 mmから30.021 mmの間に収まる必要があります。このような公差を守ることで、部品同士がぴったりはまり、安定した機能を発揮することができるのです。

H7の公差の調べ方

はめあい公差は非常に多く、国際規格ISO 286や日本工業規格JIS B 0401などによって幅広いサイズや用途に対応するように設定されています。

この多様な公差の組み合わせにより、部品の適切なはめあいが実現され、さまざまな機械設計のニーズに応えることが可能です。

H7の公差の範囲は、公差表で簡単に調べられます。公差表を使う際には、まず部品の基本サイズ(例えば直径30mm)を見つけ、その次に公差クラス(H7)を確認します。

これにより、具体的な許容範囲を把握でき、この範囲を守ることで、部品同士がスムーズにはまり、設計通りの機能を発揮します。

H7と相性の良いg6とは?

H7と相性が良いとされる「g6」は、軸側の公差クラスを示しています。H7は穴の公差を表し、g6はその穴に入る軸の公差です。

そもそも数字の前の大文字は穴のはめ合い公差、小文字は軸側のはめ合い公差を示しています。Hやg以外にも多くの種類があり、文字によって公差の位置が決まります。

また、数字は公差の範囲を表しています。数字が大きいほうが範囲が広くなります。

その中でもよく使われるのがH7とg6であり、H7とg6を組み合わせることで、適度な「はめあい」が実現し、部品同士が確実に組み合わさるようになります。

直径30 mmの場合、H7だと30.000から30.021mmの間、g6だと29.991から29.975mmの間で製造されます。そのため、H7の穴とg6の軸を組み合わせることで、部品がしっかりとはまり、過度な緩みや干渉を防ぐことができるのです。

例えば、モーターのシャフトとギアの接続、またはベアリングとシャフトの取り付けなど、動力を伝える部品の組み合わせでH7とg6は広く使われています。

この組み合わせは、部品の摩耗や振動を防ぎ、機械の信頼性を高めるために重要です。

H7/g6のメリット

H7/g6の組み合わせは、機械部品の設計において多くの利点があります。ここでは代表的な4つについて紹介します。

1. 製造の容易さと精度のバランス

H7/g6の公差範囲は、一般的な加工機械で簡単に実現できます。具体的には、旋盤やボール盤などの標準的な工作機械を使用し、通常の切削工具やリーマーで加工することで、H7/g6の精度を達成できます。

特別な工具や高度な技術が必要なく、安定した精度が確保できるため、品質を保ちながら効率的に製造することが可能です。

2. 経済性

加工が簡単なので、生産コストを抑えることができます。特に大量生産される部品や標準的な製造ラインでの使用に適しており、コストと品質のバランスが優れています。

一方で、非常に厳しい公差は、加工に高精度な機械や工具が必要で、製造時間も長くなるため経済性が悪く、コストが大幅に増加します。

このような厳しい公差は、特に高精度を求められる部品や特殊な用途に限られて使われます。

3. 適度な遊びと組み立て性

H7/g6の適度な遊びは、組み立て作業をスムーズにし、摩耗や振動を抑えます。例えば、ドアの蝶番をイメージしてください。

蝶番に少し遊びがあることで、ドアの開け閉めがスムーズにできるようになります。

この適度な遊びがないと、ドアがきつくて動かしづらくなるか、逆にガタついてしまいます。このバランスにより、部品の耐久性や信頼性が向上します。

4. 標準化による利便性

H7やg6は国際的な標準規格(例えばISO規格)として広く採用されており、設計者や製造業者にとって使いやすい公差です。また、日本国内ではJIS(日本工業規格)としても定められており、国内外で共通の基準として利用されています。

標準化により、異なる製造条件でも部品の互換性や品質を維持することが可能です。

まとめ

H7/g6がよく使われる理由は、製造が簡単でコストが安く、適度な遊びがあり、標準化されているためです。この組み合わせにより、H7/g6は多くの機械設計において理想的な選択肢となります。

H7/g6は設計と製造の両方に柔軟性があり、異なる設計や製造条件にも対応できるため、非常に汎用性が高いのが特徴です。

この公差を使うことで、部品の組み立てがスムーズに行え、機械全体の信頼性を高めることができます。

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