送風機の回転数を上げる際の注意点とは

投稿日:2023年02月24日

category:

私達の身の回りでよく見かける扇風機や換気扇等の送風機は、産業用機器としても工場やビルの空調設備等でも数多く使用されています。

そういった産業機器は、製造量(売上高)と送風機の能力が密接に絡んでいることが多く、すでに設置している送風機の能力をアップさせ、より高収益化を検討するユーザーも多く存在します。

特に、送風機の風量が製造量の律速(ボトルネック)になっている機器がある場合は、

「製造装置についているファンの風量をもっと上げて、生産量を上げたい。」

「屋内の換気量を増やすために、空調ファンの風量を増やしたい。」

「ダクトの圧力損失で閉塞気味になっているため、排気ファンの吐出圧力を上げたい。」

を製造工場の生産技術部門や設備管理部門が、頻繁に検討を行っているかと思います。

本記事では、送風機の能力アップを行う目的で、既存送風機の羽根の回転数を上げる際に、確認しておくべきことをまとめています。

ファンやブロワについて

まず、送風機であるファンやブロワの機器について、簡単に説明しておきます。

送風機の呼び方としては、「ブロワ」や「ファン」の2つがありますが、明確な基準はなく、一般的にファンよりブロワの方が吐出側の圧力が高い装置となっています。

送風機の構造は、羽根の形状から、「軸流型」「遠心型」「容積式」に分類されます。

「軸流型」は直進性のある風を作ることができるため、その多くはダクトファンや扇風機や換気扇で採用されています。

例えば、ダクトの中に扇風機を入れたような構造になっているダクトファン(下写真の軸流ファン)の羽根の形はプロペラ翼(傾斜翼)であり、回転する羽根が風を前に押し出す様に働く構造になっています。

軸流ファン

引用元:テラル社HP製品情報(APON3型)

次に「遠心型」は、ターボ型とシロッコ型の2つがあります。シロッコファンは、吐出圧力が比較的低く、流量の範囲が広い為、ビルの空調やレンジフード等の一般排気用ファンとして使用されています。

ターボファンは後退翼の形状をした羽根を回し、シロッコファンよりも吐出圧力を大きく設定できるのが特徴です。圧力損失が大きい排気ダクトや装置をつなぎたい場合は、ターボファンが採用されることが多いです。

シロッコファンとターボファン

「容積式」は、「軸流型」「遠心型」とは違い、回転軸ローターが隙間空間を作って、その隙間にあるガスを連続で圧縮することで、送風する構造となっています。また、送風機の中では、高い吐出圧力(~数十kPaG)が得られるため、粉体を輸送する空送装置にも用いられます。

容積式(ルーツブロワー)

送風機の能力上昇と回転数変化の関係

送風機は、羽根回転数を大きくすることで簡単に能力アップが可能です。

しかし、当てずっぽうで回転数を上げて運転してしまうと、モーター負荷が定格負荷を超えてしまう恐れがある為、適正な回転数を想定しておかなければいけません。

とはいえ、送風機メーカーから受け取る性能曲線では、風量と圧力の関係しか読み取れない為、回転数との関係は分かりません。

そこで、送風機の回転速度が、風量や圧力と以下の特性を持っていることを利用して予測することが出来ます。

関係1:風の流量は、回転数に比例する。

関係2:送風機の吐出圧力は、回転数の2乗に比例する。

関係3:送風機の軸動力は、回転数の3乗に比例する。

この関係を式に置き換えてみると、

関係1の式:

関係2の式:

関係3の式:

n1:回転数を上げる前の回転数 、n2:回転数を上げた後の回転数

Q1:回転数を上げる前の風量 、Q2:回転数を上げた後の風量

P1:回転数を上げる前の圧力 、P2:回転数を上げた後の圧力

S1:回転数を上げる前の軸動力 、S2:回転数を上げた後の軸動力

となります。

回転数を上げる前の状態について知ることができれば、回転数を上げた後の送風機の能力が予測できる様になります。

中でも、軸動力は回転数の3乗で変化する為、必ずモータの定格以下に収まっているか確認をするようにしましょう。

温度変化の確認を忘れずに行う

回転数を上げて圧力を変化させる場合は、温度の変化を忘れずに考慮することも必要です。私の経験上、この温度上昇の確認は、能力アップを検討する際に見落とすことがあります。

送風機でガスの圧力を高くするとガス温度は上がるのです。

ガスの温度が上がって何か問題があるのか?と思う人もいるかもしれませんが、以下の2点で問題があります。

➀製造装置などのプロセス用機器として使用している場合

化学工場や食品工場等の生産プロセスで使用している送風機は、吐出される温度が変化しても品質上の問題がないか確認を行うことになります。必要に応じてガスクーラを設置して、温度を冷やすことも考えてみてください。

➁容積式ブロワを使用している場合

ルーツブロワ等の羽根とケーシングの隙間が小さい回転機では、温度上昇により羽根や軸の熱膨張でケーシングと接触し損傷することがあります。

この損傷は、分解整備するまではなかなか気が付きにくく、損傷により徐々に隙間が広がり、性能低下してはじめて発覚するといったケースが多いのが特徴です。

これを防止するには、性能圧力を上げた際の温度が設計温度を上回らない様に運転しなければいけません。圧力を上げた際に、どれくらいの温度が上昇するかを、ブロワメーカーに問い合わせすることを推奨します。

まとめ

送風機の回転数を上げることで、能力アップを行う場合の注意点について、この記事では2つ紹介しました。

回転数と送風機の性能の変化を表す3つの関係式は、送風機だけでなく、ポンプ等の多くの回転機にも適用できるとても重要な式ですので、知っておくととても便利です。

ルーツブロワは送風機の中でも比較的圧力を高く吐出することができる為、温度上昇時の熱膨張を考慮した隙間をあけて組み立てられています。

しかし、必要以上に隙間を大きく取ることは、逆に機器性能が低下してしまう為、隙間はわずかしかありません。

運転条件を変える場合、吐出側のガス温度が設計温度を超えない様に運転できるのか、送風機メーカーに確認すると良いでしょう。

あなたにおすすめ

  • 【全32種類の機械要素を動画で学ぶ!全10章(350分)】
    機械要素を学ぶことで自然と「部品選定および設計能力」が身につく
  • 【メカトロニクスを動画で学ぶ!全7章(240分)】
    生産ライン自動化のための機械・電気・制御を理解する
  • 【モーター選定に必要な基礎知識を動画で学ぶ!全11章(320分)】
    モーターを選定するまでの流れを「ワンストップ」で理解できる