投稿日:2024年10月15日
ねじは、機械工学や配管工学の中で非常に重要な要素です。特に、テーパねじや平行ねじは液体やガスの漏れを防ぐための重要な役割を果たします。
しかし、これらのねじ規格には多くの種類があり、それぞれの違いを理解することは、エンジニアや技術者にとってもややこしく感じる部分があります。
本コラムでは、JIS(日本産業規格)におけるPTねじとPFねじの扱いや、RcねじやGねじの基本的な事項、そして国際規格であるNPTねじの違いについて詳しく解説します。
ねじ規格の基礎「テーパねじと平行ねじ」
まず、管用ねじには大きく分けてテーパねじと平行ねじの2種類があります。管用ねじのサイズはインチサイズの呼び方となっており、ねじピッチの表示は1inch(=25.4mm)あたりにいくつの山があるかを示しています。
管用テーパねじと管用平行ねじは、どちらも特定の用途に応じて設計されており、それぞれの特徴があります。
管用テーパねじとは
管用テーパねじは、特に配管接続において、液体やガスの漏れを防ぐために使用されます。ねじの直径がねじ軸に沿って徐々に減少(テーパねじ)していく形状で、ねじを締め込むと接触面が増加することで、漏れ防止や気密性効果を高めています。
管用平行ねじとは
管用平行ねじは、配管接続において、機械的な結合を目的としたねじであり、固定接続や高圧用途に適しています。ねじの直径が一定で、ねじ山は軸に平行に配置されています。漏れを防ぐために通常は、平行ねじはOリングやパッキンと併用して使用されます。
JIS規格におけるねじの種類
日本産業規格(JIS)には、様々な種類のねじ規格があり、その中で配管接続に使用されるものはテーパねじと平行ねじの2種類です。この2種類の規格にRやGやPTなどの規格が規定されています。
管用平行ねじ(G,PF):JIS B 0202について
国際規格ISO 228-1を元にして作成した規格で、ねじ山谷の形状や公差、呼称を規定しています。オスねじもメスねじもどちらも記号「G」を使いますが、オスねじにのみ等級(A級とB級)があり、A級の方が有効径に対する精度が高く設定されているのが特徴です。
ねじ記号例:
オスねじA級でサイズ1/2の場合:G1/2A
メスねじでサイズ1/2の場合:G1/2
オスねじA級でサイズ1/2の左ねじの場合:G1/2A LH
※左ねじの場合はLHをねじ記号の後につける。
一方で、旧JISの規格にはGの記号ではなく、PFの記号を使用しており、JIS B 0202の付属書に「ISO 228-1に規定されていない管用平行ねじ」として記載されています。
PFねじの特徴としては、メスねじにも等級(A級、B級)があること以外は、使用する上ではGねじと変わらず使用できます。
現時点では、GとPFの使い分けを必要以上に意識する必要はないと思いますが、今後JISの改定により、PFねじの表記がなくなることを想定しておいた方がいいかもしれません。
ねじ記号例:
ねじA級でサイズ1/2の場合:PF1/2 -A
管用テーパねじ(R,Rc,PT):JIS B 0203について
国際規格ISO 7-1を元にして作成した規格で、ねじ山谷の形状や公差、呼称を規定しています。
特徴としては、大きく2つあります。
- オスねじは「R」、メスねじは「Rc」と表し、オスメスが記号で分かるようになっている。
- メスねじにのみ平行ねじが規定に含まれており、「Rp」で表す。
①に関しては、Rの後のcがあるか無いかで、オスねじなのか、メスねじなのかが判別できるのは非常に便利です。JIS B 0202のGねじもオスとメスが分かるようになればいいのに!
と思ってしまいます。
②に関しては、どうして平行ねじがJIS B 0203で規定されているか疑問に思うかもしれません。私も初めてRpねじを見た時は、「Rpねじは、管用平行ねじのGねじと同じなのでは?」と思いました。
実は、管用テーパねじのオスに対して、メスねじが管用平行ねじでも気密性が得られるのです。ただし、テーパになっているメスねじRcに比べると気密性は劣ります。
そのため、オスのテーパねじに締め付ける場合のみ、メスの平行ねじをGねじとは表記せずに、Rpねじと表記することをJIS B 0203で規定されています。
※GねじとRpねじの違いは寸法許容差に違いがあるだけで、ねじ形状が同じであり、見た目では判断できません。おまけに、仮にRpの代わりにGねじを使用しても、百kPa程度の空気をシールすることが出来るため、実用上の使い分けはいらないのかもしれません。
ねじ記号例:
オスねじでサイズ1/2の場合:R1/2
メスねじでサイズ1/2の場合:Rc1/2
平行メスねじでサイズ1/2の場合:Rp1/2
オスねじでサイズ1/2の左ねじの場合:R1/2 LH
※左ねじの場合はLHをねじ記号の後につける。
JIS B 0203にも、旧JISの規格にPTの記号を使用しており、JIS B 0203の付属書に「ISO 7-1に規定されていない管用テーパねじ」として記載されています。
PTねじは、オスねじもメスねじもPTで表され、形状はRねじ、Rcねじと同じです。テーパねじ(オス)にはめあう平行ねじのメスはPSと表記されており、PFねじとは扱いを分けています。
ここまで説明したJISの管用ねじ規格をまとめておきます。国内でやり取りする際は、この記号をマスターしておけば特に問題ありません。
表.JIS規格の管用ねじの特徴
表.管用ねじ組み合わせ
管用ねじの海外規格について
Rねじは、ISO 7-1規格に基づいており、国際的にも使用されるテーパねじです。そのため、英語圏で使用される「BSPT(British Standard Pipe Taper)」と互換性を持っています。
同様に、Gねじも英国管用平行ねじ「BSPP(British Standard Parallel Pipe)」と互換性を有している為、海外製の管接手と容易に接続ができるようになっています。
しかし、すべての管用ねじに互換性があるわけではありません。海外の図面を見たり、海外から機器を輸入したりすると、NPTという記号のねじを見かけたことはないでしょうか?
NPTねじとは何か?
NPTねじ(National Pipe Thread)は、アメリカで広く使用されているテーパねじ規格です。ASME B1.20.1で規定されており、アメリカ国内や国際的にも多くの産業で使用されています。
NPTねじもテーパ形状を持ち、JISのRcねじやPTねじと類似していますが、いくつかの点で違いがあり、Rねじとの互換性はありません。
NPTねじは、ねじ山角度が60度であり、JIS規格のねじ(55度)とは異なります。また、NPTねじは米国で標準的に使用されているため、国内での使用に際してはアダプターや変換フィッティングが必要になります。
※NPTねじの用途は、主に北米市場向けの機械設備や、輸入された配管設備で使用されます。ガス配管や油圧システムなど、さまざまな米国向け機器で見られます。
ちなみに、平行ねじもNPSねじとしてアメリカ国内で流通しています。このNPSねじもねじ山角度が60度であり、Gねじとの互換性はありません。その他に、アメリカ独自の管用ねじ規格(例:耐密ねじ規格NPTFなど)が、用途に合わせて複数あります。
まとめ
管用ねじは、簡単に気密性を有して接続できる為、非常に便利な接続方法として、主に水や空気などの流体用管で使用されています。
エンジニアは、適切なねじを選定し、安全で効率的な配管システムを構築する為に、ねじ用途やその違いを理解しておくことが大切です。
特に、国際規格との違いや互換性を理解しておくことは、グローバルに活動するエンジニアにとって非常に重要です。