【ものづくりの学び】“攻めの品質改善”へ。設計支援ツールと成功事例に学ぶ実践法

投稿日:2025年10月28日

設計品質を高めるためのベストプラクティス集」シリーズの最終回では、設計品質をより高めるために役立つツールの活用方法や、現場で活かせる具体的なアイデアをお届けします。

【シリーズ内容】
第1回:設計品質とは何か?現場で求められる“品質”の正体
第2回:標準化と文書化で“属人設計”から脱却する
第3回:ツール活用と成功事例に学ぶ“攻めの設計品質向上”

ツールを“使いこなす”ことが品質改善の第一歩

CADやシミュレーションは導入しているけれど、十分に活用できていない…

そんなお悩みをお聞きすることがあります。
これは多くの現場で共通して抱えている課題であり、せっかく導入したツールが持つ本来の力を十分に活かせていないケースが少なくありません。

設計支援ツールはあくまで「道具」です。

大切なのは、設計品質を高めるという目的に向けて、それらを適切に使いこなすことです。

ツールの導入はあくまでスタート地点であり、運用や活用の工夫があってこそ、品質改善というゴールに近づくことができます。

ここでは、特に設計品質の向上に効果的な2つのツールをご紹介します。
それぞれの役割と活用法を、わかりやすく解説していきます。

①CAD・シミュレーションツールの活用

CAD(コンピューター支援設計ツール)は、現在の設計業務において欠かせない存在です。

紙の図面では見落としやすかった干渉や構造的な不整合も、3Dデータを使うことで目に見える形で確認できるようになります。

特に、設計品質の観点からは「形状や構造を可視化すること」と「設計段階で検証すること」がポイントになります。

これにより、作り手と使い手、関係部門との情報のズレを最小限に抑えることが可能になります。

たとえば次のような使い方があります:

– 部品同士がぶつからないかを確認(アセンブリ単位でのチェック)
– 厚みや形状が極端に偏っていないか確認
– 実際に動かしたときに問題がないかをシミュレーションで確認
– 製品にかかる力やその分布を解析(SimulationXやSIMPLISなど)

これらの作業を設計の初期段階で行うことで、後になって発生する修正や不具合のリスクを大幅に減らすことができます。

また、「3Dモデルを使って過去の失敗例を共有する」といった教育への活用も広がっており、ツールは設計ノウハウの伝承にも有効です。

新入社員の教育や部署間での情報共有など、多くの場面で活用が可能です。

②進捗・タスク管理ツールで設計フローを見える化

設計の品質が不安定になる原因のひとつが、作業の属人化や情報の共有不足です。

誰がどこまで進んでいるのか、どこで詰まっているのかが見えない状況では、品質の維持や工程の最適化は難しくなります。

こうした問題への対策として、プロジェクト管理やタスク管理のツールが役立ちます。これらのツールを導入することで、業務の可視化と円滑な連携が可能になります。

代表的な効果としては次のようなものがあります:

– 設計プロセス全体の可視化と進捗確認
– 作業漏れやスケジュール遅延の防止
– 情報・資料の一元管理と、部門間の連携強化

情報共有の精度が設計品質に与える影響がますます大きくなっている今、こうしたツールの活用は重要な取り組みとなっています。

また、これらのツールは「進捗報告の効率化」や「設計レビューの自動通知」などにも応用でき、現場の負担を減らしつつ、設計全体の見通しを良くしてくれます。

設計品質向上のためにできること

設計品質を安定的に高めるためには、日々の設計業務の中で「ちょっとした工夫」や「共有の仕組み」を取り入れていくことが有効です。
ここでは、一般的に役立つとされる考え方や方法について、いくつかご紹介します。

●設計段階でのチェック強化によるミスの予防

CADを使って部品同士の干渉を確認したり、簡単なシミュレーションで力のかかり方を把握したりするなど、設計の初期段階で気づきを得る工夫は多くの現場で活用されています。

また、設計ルールやチェック項目を整理しておくことで、誰が設計しても一定の品質を保ちやすくなります。

●知識や考え方の共有で教育を効率化

設計の進め方にばらつきが出ないように、テンプレートや社内の基本ルールを用意しておくと、共通の土台のもとで作業が進められます。

さらに、経験豊富な設計者が持つ知識や考え方を文書で残しておくと、新人や若手にとって非常に参考になります。

こうした工夫によって、技術の継承がスムーズになることが期待できます。

ほかにも、不具合の発生が減ったり、新人技術者が早い段階で実務に入れたりするようになるなど、日々の設計活動を少しずつ見直すことで、良い変化が生まれる可能性があります。

設計支援ツールの活用や、情報の整理・共有といった取り組みは、大がかりな制度ではなくても、現場に合った形で始められるのが特長です。

まずはできるところから、品質向上のきっかけをつくっていくのが大切です。

まとめ:設計品質向上は継続的な取り組み

今回までの全3回を通して、設計品質を高めるための考え方や方法をご紹介してきました。

品質向上のためには、チェックリストや標準化など基本的な取り組みの積み重ねと、ツールや共有知識の活用といった積極的な工夫の両方が大切です。

設計品質は、設計者一人の努力だけで守れるものではありません。
チームや会社全体、さらには組織文化として「品質を大切にする」ことが、これからの時代にますます求められます。

まずは、身近なところから。チェック項目を見直す、情報の記録を整理する、
あるいは設計会議で「品質とは何か」を話し合ってみるだけでも、大きな一歩になります。

このシリーズが、皆さまの現場で品質改善の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

バックナンバー

「“良い設計”とは?今こそ見直したい設計品質の基本」はこちら
「属人設計から脱却する!設計標準化と文書化の実践ポイント」はこちら

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