【ものづくりの学び】何から教えるべき?技術伝承の優先順位の決め方

投稿日:2025年06月17日

MONO塾では、ものづくりに携わる皆様に向けて、
新着コラムや設計に役立つ情報を月に数回お届けしています。

今回は「計画的な技術伝承」シリーズの第3回をお届けします。

【シリーズ内容】
第1回:技術を確実に継ぐために!見える化の重要性
第2回:技術を見える化!経験や勘を言語化する方法
第3回:何から教えるべき?技術伝承の優先順位の決め方

シリーズを通して、技術の「見える化」と技術の「伝承」に役立つヒントをご紹介します。

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今回は、伝えるべき技術の優先順位をどう決めるか、
そして計画的に教育を進める方法について解説します。

技術をしっかり次の世代に伝えていくためには、
すべての技術を均等に伝えるのは難しく、限られた人手と時間の中で、
優先順位をつけて進めることが重要です。

どの技術を優先的に伝承すべきかを考える際には、
以下のポイントを意識しましょう。

技術の優先順位を決めるポイント

技術伝承を進める際には、すべての技術を伝えるのではなく、
優先順位をつけることが大切です。

特に、企業の競争力を高めるために、
どの技術を優先すべきかを明確にしておくことが重要です。

1. 会社の強みとなる技術

企業の競争力を支える中核となる設計技術は、
最優先で伝承すべき重要な知識です。

独自の設計ノウハウや、高い市場評価を受けている技術は、
企業の成長を支える基盤となるため、
次世代の設計者へ確実に受け継ぐ必要があります。

例えば、特定の負荷条件に適した設計基準や材料選定のノウハウ、
自社独自のCAE解析手法などは、
他社との差別化につながる重要な技術です。

また、独自の設計プロセスや標準化ルール、
特許技術を活用した設計手法も、企業の競争力を支える要素となるため、
継続的な技術伝承が求められます。

ただし、こうした技術の中には、
機密性の高い設計情報や特許技術を活用したノウハウなど、
慎重に管理すべきものも存在します。

これらの情報を安全に伝承するためには、
アクセス管理や機密情報の取り扱いルールを明確にし、
適切な保護策を講じることが重要です。

技術の継承を進める上で、
「伝えるべき情報」と「厳格に管理すべき情報」を明確に区別し、
企業の競争力を維持しながら、安全な技術継承の仕組みを整えることが求められます。

2. 他の方法では代わりにくい技術

設計業務の中には、単純な自動化では代替できない、
経験や判断が求められる技術があります。

こうした技術は、ソフトウェアの発展やAIの導入が進む中でも、
設計者の知識と経験に基づく判断が不可欠であり、
次世代に確実に伝承する必要があります。

例えば、材料の選定や加工技術の適用に関する判断は、
単なる理論や計算ではカバーしきれない要素を含みます。

材料選定では、異なる材料の特性(強度、耐摩耗性、耐熱性など)を考慮し、
設計要件やコストバランスを踏まえた最適な選定が求められます。

また、加工技術では、切削、鋳造、プレスなど、それぞれの製造方法の特徴を理解し、
形状・コスト・強度・生産性を最適化する判断が必要になります。

これらのスキルは、単なるツールの操作だけでは習得できるものではなく、
実際の経験を通じて磨かれていくものです。

そのため、熟練者の知識や判断基準を明文化し、適切に伝承することが、
設計技術の継承において重要な課題となっています。

また、試作や設計変更時の最適な意思決定、
構造設計における安全率の考え方など、
長年の設計経験がなければ身につかないスキルも、
適切な方法で伝承することが重要です。

3. 日常的に行われる設計業務や頻繁に使う技術

日々の設計業務の中で頻繁に使われる技術は、
継続的に教育し、設計品質や業務の安定性を保つことが重要です。

特に、設計の標準的な手順やトラブル対応のノウハウは、
実務でスムーズに活用できる形で整理し、
次世代の設計者が即戦力として活躍できるようにする必要があります。

例えば、デザインレビュー(DR)時のチェックポイントや部品選定の基準、
図面の作成ルールなど、日常的に行う作業でありながら、
設計品質に大きく影響を与える技術は、
標準化し、体系的に伝えることが求められます。

技術を教える計画の立て方

技術を適切に伝承するためには、計画的な教育が必要です。
場当たり的な教育ではなく、体系的に学べる仕組みを作ることで、
技術の習得効率が大きく向上します。

1. 段階的な教育計画を立てる

設計技術を確実に身につけるためには、
基礎から応用へと段階的に学んでいくことが大切です。

まずは基本的な知識をしっかり理解し、
少しずつ実践を重ねながら応用力を高めることで、
無理なくスキルを伸ばすことができます。

例えば、
新入社員には3DCADの基本操作や図面作成のルール、
設計基準を学ぶ研修を行い、中堅設計者にはCAE解析の活用や設計最適化、
コストを考慮した設計手法などの実践的なトレーニングを実施します。

また、学んだ内容を記録し、
設計スキルの習得状況を可視化することで、
教育の進捗が把握しやすくなり、
効果的な技術伝承が可能になります。

2. 現場での実践指導と座学のバランスを考える

設計技術を学ぶ際には、知識として理解するだけでなく、
実際に設計業務を通じて身につけることが大切です。

座学で基礎を学んだ後に、実務を通して経験を積むことで、
より深い理解につながります。

例えば、
新しい3DCADソフトやCAE解析ツールを導入する際には、
まず基本的な操作方法や理論を座学で学び、
その後、実際の設計課題を使って演習を行うことで、
実践的なスキルを身につけることができます。

また、設計業務では特許や知的財産の知識も重要です。
自社の技術を守りながら競争力を高めるために、
特許出願の基礎や知的財産の管理方法についての学習を取り入れることで、
設計者としてのスキルをより強化できます。

3. 経験者が指導する仕組みを作る

長年の経験を持つベテラン設計者が、
若手に技術を伝えていく環境を整えることも重要です。

熟練者の知識や設計の工夫を直接学ぶことで、
若手設計者は効率的にスキルを習得し、
設計力を高めることができます。

例えば、
週に1回、ベテラン設計者が設計レビューや技術共有会を実施し、
若手設計者が実際の設計課題をもとにアドバイスを受ける機会を作ると、
実務に即した形で学習が進みます。

また、学んだ内容をドキュメント化し、
設計ナレッジとして蓄積することで、技術の標準化が進み、
組織全体の設計品質向上につながります。

4. 定期的な評価とフィードバック

学んだことがしっかり身についているかを確認しながら進めると、
より効果的な技術教育ができます。
定期的に振り返りを行い、必要に応じて学びの内容を見直していきましょう。

例えば、
技術者同士が月に一度集まり、
学んだことや実際の現場での経験を共有します。

課題や悩みを話し合い、
より良い方法を一緒に考えることで、
技術の習得を深めていけます。

技術教育の定着に向けた指導者の評価とインセンティブ

技術教育を持続的に進めるためには、
ベテラン設計者が積極的に指導に関わる環境を整えることが重要です。

そのためには、指導者に対して適切な評価やインセンティブを提供し、
教育活動への参加を促進する仕組みが必要になります。

指導者の評価基準としては、設計プロジェクトでの技術指導の実績や、
設計レビュー・技術検討会での貢献度を考慮すると効果的です。

また、技術教育に積極的に貢献した設計者を
「社内認定メンター」として認定し、組織内での役割を明確にすることで、
指導活動のモチベーション向上につながります。

さらに、特別手当の支給や、
技術指導の経験が評価・昇進の要素として考慮される仕組みを導入することで、
設計者が教育活動を負担ではなくキャリア形成の一環として捉えられる
環境を作ることができます。

まとめ

技術伝承を成功させるためには、
伝えるべき技術の優先順位を明確にし、
計画的な教育を実施することが重要です。

さらに、一度教えて終わりではなく、
継続的に知識の更新や共有を行う仕組みを整えることで、
企業全体の競争力を高めることができます。

このシリーズでは、
計画的な技術伝承の重要性とその手法について解説しました。

あなたの企業でも、ぜひ取り組んでみてください。

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