【第1回:振動入門】振動の「基礎」を理解する

投稿日:2023年11月07日

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先日からご案内していました
新eラーニングについての最新情報をお伝えいたします。

機械力学入門講座(振動編)は、
11月15日の発売が決定いたしました!

また、振動について知識を深めていただける
「連載メルマガ(全4回)」をお送りいたします。

連載メルマガの内容とは?

こちらのメルマガは、
振動問題や解析業務に取り組む
設計初心者から中堅設計者を対象としてお話していきます。

多くの設計者が不安を抱える
振動問題」についてお届けしますので、ぜひお楽しみください。

今回の連載を読み終えるころには、

「 振動とはなにか?」

「 なぜ、振動の知識が重要なのか? 」

「 振動学には『複雑な数学の理解』が必要なのか? 」

「 効率よく学ぶための学習方法とは? 」

ということが、ご理解いただけるはずです。

第一回目の本日は

身近な例で、振動の基礎を理解する

というテーマでお話しします。

「共振」とは?

振動の理解を深めるには、
身近な例を取り上げて考えることが非常に有効です。

そこで、今回は私たちの日常生活で直接振動と関わる機器である
「洗濯機」を取り上げたいと思います。

洗濯機の脱水を例に学ぶことで、
振動の原理や現象を「体感的」に捉えることができるはずです。

それでは進めていきましょう。

皆さんも脱水中に、
洗濯機が「ガタガタ」と音を立てて揺れることを
経験したことがあるのではないでしょうか。

実は、これが「共振」といわれる現象です。

共振とは・・・、
その言葉が示すとおり、「共に振動する」ことを意味します。

つまり、洗濯機の場合であれば

・モーター(洗濯槽)の振動

と、

・洗濯機自体

が同じ振動数で振動することを意味しています。

そして、この共振が発生すると、
通常の振動と比べて、『さらに大きな振動』が生じるわけです。

このような現象から、共振は
機械の性能が損われる」「機械が破損する」といった原因となります。

そのため、設計者は
通常の運転条件下で共振が発生しないように設計する必要があります

共振に関わる「固有振動数」について

共振が起きる条件は、モーター(洗濯槽)の振動数と洗濯機の 

 ・・・・・
固有振動数」が一致するときです。

さて、ここで「固有振動数」という専門用語がでてきました。
もしかすると、初めて耳にした方もいらっしゃるかもしれませんね。

固有振動数とは

物体が自然に振動する特定の周波数

のことです。

例えば、

ブランコの振動の周期は、ブランコの鎖の長さによって決まります。

鎖の長さにより、固有の振動周期が定まるわけです。

体格の違う「大人」と「子供」でも
ブランコの振れる周期が同じなのは、ブランコの鎖の長さが同じだからですね。

それでは、洗濯機はどうでしょうか。

洗濯機の場合、
固有振動数は「洗濯機の形状」や「質量」などによって決まります。

固有振動数を求める一般的な式として、
ーーーーー

・F=1/(2π)×√(k/m)

ーーーーー
があります。

この式のkは「ばね定数」、mは「質量」です。

ただし、この式は基本的なもので、
実際の洗濯機の固有振動数は多くの部品や他の要因によって影響されます。

そのため、実際の値を正確に知るには詳しい解析が求められます。

このことを踏まえた上で、
この式をもう一度みてみましょう。

・F=1/(2π)×√(k/m)

式をみていただくとわかりますが、

洗濯機の固有振動数は、
洗濯機の質量 m とばね定数 k(変形のしにくさ)で決まることがわかります。

そして、固有振動数を高くするには、
質量 m を小さくするか、ばね定数 k を大きくする必要があります。

このように、振動問題を解決するには、
これらの公式を理解する必要があるわけです。

それでは、具体的に

1)モーターの通常運転における振動数が「13Hz (約800rpm)」

2)洗濯機の固有振動数が「1Hz」

の、場合を考えてみます。

ーーーーー

用語解説・・Hz(ヘルツ)は、回/秒と置き換えて考えてください。
      つまり、ヘルツは「1秒間に振動する回数」を示します。

ーーーーー

洗濯機は回転をはじめると、
ゆっくりと回転速度を上げていきますね。

そして、どこかのタイミングで
モーターの回転速度と洗濯機の固有振動数が「一致」します。

この一致するタイミングこそが「共振」であり、
共振が起こると、洗濯機がガタガタと揺れるのです。

また、逆に洗濯機を停止する際に
ゆっくりと速度を落としていく過程でも、共振が発生します。

共振が一瞬であればよいのですが、
洗濯物が偏っていると、固有振動数が変化し、
洗濯機の回転数と長時間一致してしまうことがあります。

すると長時間ガタガタと揺れ、洗濯機が動いたり、自動で止まってしまうこともあります。

以上のように、

私たちが洗濯機で見たことがある現象を
「振動学」で説明すると、このような説明になります。

また、一般的には
製品の固有振動数は「高く」設計されることが多いです。

ですが、今回例にした洗濯機は、固有振動数が低く設計されています。

共振の危険を「回避」するため、
モーターの回転数より低い回転数で共振が起こるように考えられているわけです。

もし、洗濯機がフル回転しているときに、
共振が起こると大変ですね。

このように、設計者は
振動の特性を考慮して、製品や機械の設計を行うことが大切です

本日は、以上となります。

初回でしたので、振動に詳しくない方でもイメージしやすいように、
身近な例を挙げて、振動について説明してきました。

すでに、振動の知識がある方や、経験者にとっては
簡単な内容だと思いますが、徐々に実務的な内容をお話していきますので
楽しみにしていてください。

今回リリースするEラーニングの講座内容についても、
徐々に公開して行く予定です。

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次回(第2回)では

振動や騒音問題について、悩んでいませんか?

をテーマにお話していきます。

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それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。