【ものづくりの学び】UXを意識した設計が、製品の未来を変える

投稿日:2026年01月13日

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今回から2回にわたって「UX(ユーザーエクスペリエンス)」をテーマにしたシリーズをお届けします。

設計者の視点だけでは見落としがちな“使いやすさ”という価値に焦点を当て、現場ですぐに活用できる具体的なアイデアや考え方をご紹介していきます。

【シリーズ内容】
第1回:UXを意識した設計が、製品の未来を変える
第2回:UX向上のための5つの設計ポイント

このシリーズでは、製品設計における「使いやすさ」に注目し、ユーザー視点での設計改善が実務にもたらす効果や取り組み方について分かりやすくご紹介します。

ものづくりの現場で、こんな経験はありませんか?

「性能は優れているのに、ユーザーの評価がいまひとつ伸びない」
「現場から“使いづらい”という声はあるが、具体的な原因が分からない」

どんなに技術的に優れた製品でも、実際に使う人の立場から「扱いにくい」「わかりにくい」と感じられれば、評価が下がってしまうこともあります。

こうした課題の背景には、「ユーザーエクスペリエンス(UX)」という考え方が設計に十分取り入れられていないことがよくあります。

UXとは、製品を使う人がその使用を通じて得る体験全体を指し、操作のしやすさや情報の伝わりやすさ、安心感なども含まれます。

ユーザー視点の欠如

私たち設計者が日々向き合っているのは、図面や仕様、材料選定、強度、加工性、コストといった技術的・機能的な要素です。

どれも製品を成立させるうえで欠かせない重要な要素ですが、それらをすべてクリアしたとしても、最終的に使う人が「分かりにくい」「操作が難しい」と感じるならば、その製品は本当の意味で完成しているとは言えません。

たとえば、ボタンの配置や操作の順序が直感的でない場合、ユーザーは毎回マニュアルを見直すことになり、現場の効率が落ちてしまいます。

また、不慣れな人が操作を間違えてしまうと、安全性にも関わるリスクが生じることもあります。

では、どうすればユーザーにとって“使いやすい”設計が実現できるのでしょうか?

答えの鍵を握るのがUXの考え方です。

直感的な操作性

身の回りの製品の中には、説明書を見なくても自然と使い方がわかるものがあります。

たとえば、ボールペンのノック機構。

押すと芯が出て、もう一度押すと戻る。
誰にも教わらずに使えている、こうした直感的な操作性がある製品は、ユーザーにストレスを感じさせません。

このような設計思想は、工業製品にも応用できます。

たとえば、工場内で使用されるスイッチやコントロールパネルでは、視覚や触覚によるヒントを与えることで、操作ミスの防止につながります。

一例として、誤って押されやすい平型スイッチを、持ち上げる動作が必要なレバー型に変更することがあります。こうすることで、意図しない操作が減り、ミスによる停止やトラブルの発生を抑えられるといった効果が期待されます。

このように、直感的に使いやすい設計は、現場の効率化や安全性の向上にも有効です。

フィードバックの工夫

UXを高めるためには、「操作がわかりやすい」だけでなく、「操作の結果が明確に伝わる」ことも重要です。

このとき役立つのが「アフォーダンス」の考え方です。
アフォーダンスデザインとは、物の形や特徴が「どのように使えばよいか」を自然と示す設計手法のことです。

たとえば、取っ手があれば「引くものだ」とわかり、押しボタンのような形状をしていれば「押すものだ」と直感的に理解できます。

このような視覚的なヒントに加えて、操作後に返ってくる反応――すなわち「フィードバック」も大切な情報です。

具体的には、LEDランプで状態を知らせたり、操作音(ビープ音)を出したり、スイッチの押し心地やクリック感を工夫することで、ユーザーに「きちんと操作できた」と認識させることができます。

これにより、ユーザーの不安を軽減し、ミスを防ぐ設計につながります。

UX設計の効果

UXを意識した設計には多くのメリットがあります。

まず、使いやすい設計はユーザーの満足度を高め、製品に対する信頼感や安心感を高めます。

それによって、問い合わせ件数の削減やクレームの減少といった、間接的なコストの削減にもつながります。

さらに、ユーザーにとって使いやすい製品はリピート購入につながりやすく、口コミなどでの紹介も増える傾向にあります。

また、UX設計は属人的な経験や勘に頼るものではなく、誰でも一定の品質で設計ができるようになる「再現性のある技術」として導入できます。

たとえば、設計レビューにおいて「直感的に使えるか?」「操作に対するフィードバックはあるか?」などのチェックリストを設けることで、組織全体の設計品質を安定させる仕組みが作れます。

このように、UXを意識することは製品開発の現場にとって、今や欠かせない視点となりつつあります。

まとめ

「性能が良ければ売れる」時代は過ぎ、いまや“誰がどこで、どのように使うのか”を見据えた設計が重要です。

UXの視点を取り入れることで、設計者自身がこれまで見えていなかった改善点に気づけるようになります。
そして、ユーザーにとって本当に価値のある製品づくりへと一歩近づくことができるのです。

次回のメルマガでは、「UX向上のための5つのポイント」をご紹介します。

ユーザーの負担を軽減する設計の工夫や、操作性の一貫性、現場環境に配慮した設計改善など、実務に役立つアイデアを具体的にお届けします。

「使いやすさ」は、設計者の思いやりの現れでもあります。
ぜひ、あなたの設計にもUXの視点を取り入れてみてください。

次回のご案内:UX向上のための5つの設計ポイント

次回のメルマガでは、実際に設計現場で活かせる「UXを高める5つのポイント」をご紹介します。

人間工学に基づいた設計配慮、操作レイアウトの一貫性、使用環境を踏まえた設計など、すぐに活用できる具体例を多数お届けする予定です。

どうぞお楽しみに。

ものづくりウェブ事務局