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NBRやEPDM等のゴム製シール材質の選定入門|種類比較と選び方

投稿日:2026年02月16日

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配管・機械装置のシール、ガスケット、防振、保護カバーなどでゴムは定番材料です。一方で、実際の現場では温度・媒体・圧力・摺動・屋外暴露など複数の条件が同時に作用します。

そのため、材質選定を誤ると「膨潤(※)して寸法が狂う」「硬化して追従せず漏れる」「亀裂が走る」「圧縮永久ひずみ(※2)が増えて締付けが効かない」といった不具合が起きます。

本コラムでは、共通特性を押さえたうえで、NR、NBR、EPDM、FKMと、ゴムの代替として頻出するPTFEを整理し、選定基準を実務目線で解説します。
(※)膨潤とは、液体に浸漬させた際の体積変化。

このコラムを書いた人

機械系プラントエンジニア
国内化学プラントで機械設計や建設工事を10年以上経験。危険物製造設備、発電・ボイラ設備・排水処理設備、研究施設の多種多様な設計・調達・工事に携わり、その知識をコラムにて発信中。現場でも活かせる専門知識を、日本のモノづくりに活かしてもらいたい!という強い思いを持っている。

ゴム材質の特徴(配合で性格が変わる)


ゴムはベースとなる原料ゴムに、補強材(カーボンブラック等)、可塑剤、老化防止剤、加硫剤などを加えて作る配合材料です。

同じ略号でも配合や加硫条件で、耐熱、耐油、圧縮永久ひずみ、摩耗、反発弾性が大きく変わります。

従って図面や購買仕様では、略号だけでなく「想定媒体」「温度範囲」「硬さ」「必要物性(圧縮永久ひずみ、引張強さなど)」まで言語化し、メーカが示すグレード選定に落とし込むのが良いといえます。

JISに基づく材質略号(記号)は共通言語

ゴムの材質略号は、化学構造による分類としてJISで整理されており、NR(天然ゴム)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム又はエチレン・プロピレン・ジエンゴムとも呼ぶ)、FKM(フッ素ゴム)などが代表例です。

仕様書や材料表、シール部品の材料指定で頻出し、関係者間の誤解を減らすための“共通言語”になります。

しかし、実務上でゴム材料を指定する際は、材質略号(記号)だけを伝えても、仕様にばらつきが生じてしまいます。

製品規格での材料識別記号

たとえばOリングでは「NBR-70-1」「FKM-90」「EPDM-70」のように、材質略号+硬さ(代表値)+用途区分(必要に応じ)をセットで規定します。設計・購買・現場でなるべく同じ品質を指定できる書き方です。

そのため、ゴムの材質を指定する際は、原料ゴムの略号でなく、製品規格での材料識別記号で指定するようにしましょう

硬さの表現が設計を左右する

ゴムの硬さは数値だけでは意味が確定せず、試験方法込みで指定することが重要です。

一般的に使用される硬さは、JIS K 6253-3のデュロメータ硬さを使用することが多く、図面や仕様では「タイプA硬さ70」のようにタイプと数値を併記します。

デュロメータ硬さの測定方法を以下図に示します。Oリングで用いる際は、硬さ70~90を用いるのが一般的です。硬さ指定をする際は、測定方法をイメージできるようにしておきましょう。

デュロメータの測定方法

デュロメータのタイプの違いによる押し針先端形状

硬さはシールの基本挙動を決めます。一般に硬いほど押し出しに強く、柔らかいほど相手面のうねりや偏心に追従しやすくなります。

高圧で隙間がある条件では硬さを上げたり、バックアップリングを併用したりしてはみ出し(シール部から圧力で押し出される現象)を抑えます。

一方、低面圧でのガスケットで用いる場合は硬すぎると追従不足で漏れやすくなるため、締付け面圧と相手面粗さを踏まえて硬さと厚みを決めます。

ゴム材質の種類と特徴(硬さ以外の特性を理解しよう)

ゴム材を選定する場合、多くの場合は材質略号と硬さを指定することが重要ですが、他にも重要な物性があります。

1つ目は長期のシール維持性です。圧縮永久ひずみが大きいと締付け後に復元せず、シール応力が低下して漏れにつながります。

2つ目は耐食性です。液体に浸漬させた際の体積変化(膨潤)は、寸法変化だけでなく硬さ変化や摩耗増大を招きます。

3つ目は耐候性です。屋外では紫外線とオゾンによる亀裂が支配的になりやすく、耐候性の弱い材料は短期間で割れが進行することがあります。

NR(天然ゴム)

弾性と機械的強度が高く、反発性や耐摩耗性に優れるため、防振ゴムやクッション用途で力を発揮します。

動的変形が大きい条件に強い反面、油や溶剤への耐性、耐候性は一般に強くありません。屋外暴露やオゾン環境では亀裂が起点となるため、シール用途では環境を選びます。

NBR(ニトリルゴム)

鉱物油、潤滑油、作動油、燃料油などに対する耐性を狙える定番材で、油圧機器や一般シールで採用例が多い材料です。

耐摩耗性やコストバランスにも優れます。一方で耐候性や耐オゾン性は得意ではなく、屋外やオゾン環境では表面亀裂が出やすい傾向があります。

EPDM(エチレンプロピレン系)

耐候性と耐オゾン性に優れ、屋外暴露や水系、温水、冷却水、ブレーキ液やグリコール系などで選ばれやすい材料です。温度変化による硬さの変化が少なく、長期でシール性の低下が少ないです。

また、屋外使用での割れに強く、多くの酸やアルカリに対して耐性があるため、ガスケットや水系シールの第一候補になりやすい一方、鉱物油や燃料油には不向きで、油が絡むと膨潤や物性低下を招くことがあります。

FKM(フッ素ゴム)

高温域での耐熱性と、燃料、油、溶剤などに対する耐性を狙える材料で、過酷条件のシールで採用されます。

NBRより高温側に余裕を持たせやすく、油系で長寿命を狙いたいときに有効です。一方で低温域では硬化して追従性が落ちやすいのが特徴です。

代表的な製品としては、デュポン(現ケマーズ)社のViton(バイトン)が有名です。FKMは他のゴム材に比べ高価である為、用途に応じて設計者が判断する必要があります。

PTFE(フッ素樹脂)

PTFEはゴムではなく樹脂ですが、強い耐薬品性と低摩擦特性を持ち、溶剤雰囲気や摺動部でゴムの代替として頻出します。

温度適用範囲も広く、化学的に安定です。ただし弾性回復が小さく、クリープでシール応力が低下しやすいため、PTFEの硬さを考慮して使用することが大切です。

材質 得意な環境 注意点 一言でいうと
NR 動的変形が大きい条件 油・屋外に弱い よく動く用途向け
NBR 鉱物油、潤滑油など 耐候性・耐オゾン性が低い 油ならまず検討
EPDM 水・屋外・ブレーキ液など 油に不向き 水・屋外の定番
FKM 高温・油・溶剤 低温条件、高コスト 高温・過酷条件用
PTFE 薬品・摺動 弾性回復が小さい ゴムで無理なら検討

※実際の性能は配合・硬さ・使用条件により異なります。

設計側の条件も考慮しておく

ゴムは形状と取り付け条件の影響も考慮しなければいけない材料です。特に次の3点は、材質選定とセットであらかじめ仕様化しておくと失敗が減ります。

①シール部の面圧が成立するか

ボルト配置やフランジ剛性で面圧が偏るため、シール面全域で必要面圧が確保できるかを確認します。

一般的なガスケットに用いるゴム材は、メーカがシールできる流体、圧力、温度をフランジ規格(形状)ごとに製品規格として持っており、その規格を参照して選定すると良いでしょう。

②隙間管理

高圧では溝寸法とクリアランスがはみ出しを支配します。Oリングを使用する場合、つぶし代が適切に確保できるように加工精度も考慮して設計することが大切です。

③表面状態

取り付け面の面粗さや傷は、漏れだけでなく、摩耗による発熱にも直結します。どうしても機械の摺動により摩耗や発熱が発生する場合は、ゴム材に補強材を含有させてゴム材の延命をするのが定石です。

ゴム材の選定方法について

ゴムの選定では、まずNR、NBR、EPDM、FKM、PTFEそれぞれの得意領域を押さえることが重要です。

そのために媒体、温度、圧力、摺動、屋外暴露を分解し、JISの表記体系に沿って材質と硬さを選択するのが、ゴム材選択の最短ルートになります。

さらに、過去実績がない等の理由で判断が難しい場合は、実媒体での浸漬による体積変化確認と、想定温度での圧縮永久ひずみ確認を小試験として実施し、条件を記録に残すことも大切です。

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