第2回:「なぜ設計に迷う?」機能分解で変わる設計の進め方

投稿日:2026年05月14日

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いつもMONOWEB通信をご購読いただき、ありがとうございます。

前回のメルマガでは、
設計がブレる原因は「要望を機能に変換できていないこと」にある、
というお話をしました。

第2回となる今回は、
構想設計で多くの設計者がつまずく、

機能をどのように分解し、整理するのか

というテーマに焦点を当てていきます。

機能設計の質は、
この“分解の精度”で決まると言っても過言ではありません。

機能は、分解してはじめて使える

設計を進める中で、

なんとなく機能は分かっているが、整理できていない
全体像はあるが、細かい検討に入ると迷ってしまう

と感じたことはありませんか?

この状態のまま設計を進めてしまうと、
途中で矛盾が生じたり、
抜け漏れが見つかったりと、手戻りが発生します。

その原因は、
機能が“曖昧なまま”になっていることです。

機能は、分解して初めて使える状態になります。

よくある課題:機能が“ひとかたまり”になっている

たとえば、ある装置で
「ワークを固定する」という機能があったとします。

このままでは、設計には使えません。

なぜなら、この機能の中には、

・位置を決める
・ずれを防ぐ
・外れないように保持する

といった複数の役割が含まれているからです。

この状態で設計を進めると、
どの機能をどの部品で実現するのかが曖昧になり、
設計の整合性が取れなくなります。

機能を“ひとかたまり”のまま扱うことが、
設計の混乱を招く原因なのです。

機能分解の基本:「一部品一機能」で考える

機能設計では、
機能をできるだけシンプルな単位に分解することが重要です。

その基本となる考え方が、

一部品一機能」です。

1つの部品に対して、
1つの機能を持たせる。

この考え方で分解していくことで、
機能と構造の対応関係が明確になります。

たとえば先ほどの「固定する」という機能も、

・位置決めする機能
・押さえる機能
・保持する機能

といった機能に分け、それを実現する部品を考えることで、
それぞれに適した構造を検討できるようになります。

このように分解することで、
構造を筋道立てて検討できるようになります。

機能同士の関係を整理する

機能は分解するだけでは不十分です。
それぞれの関係性を整理することも重要です。

機能同士には、

・順番に働くもの
・同時に働くもの
・互いに影響し合うもの

といった関係があります。

これらを整理せずに設計を進めると、
ある機能を改善したことで別の機能に影響が出るなど、
思わぬ問題が発生することがあります。

機能構成を図やツリーで可視化することで、
全体のバランスを見ながら設計できるようになります。

つまり、
分解と整理はセットで考える必要があるのです。

ストーリー:若手リーダー・中村さんの気づき

入社10年目の中村さんは、
新しい装置の構想設計を任されました。

「ワークを安定して搬送する」という要求に対して、
シンプルな搬送機構で設計を進めましたが、
レビューでは「安定性に不安がある」と指摘されてしまいました。

中村さんは「十分に考えたはずなのに」と感じていましたが、
上司からこう言われました。

「その“安定”って、何でできているか分解してみたか?」

そこで改めて機能を分解してみると、

・ワークの姿勢を維持する機能
・振動を抑える機能
・スムーズに移動する機能

といった複数の機能が含まれていることに気づきました。

しかし、機能を分解しただけでは、
すぐに最適な構造が決まるわけではありません。

そこで中村さんは、
それぞれの機能に対して複数の実現方法を検討しました。

その結果、設計の精度は大きく向上し、
再レビューではスムーズに承認されました。

中村さんはこう振り返ります。

「機能を分解せずに設計していたときは、
 なんとなく形を作っていただけだった。」

この気づきが、設計の質を大きく変えたのです。

機能分解が、設計の質を引き上げる

機能を正しく分解できるようになると、

・設計の抜け漏れが減る
・各部品の役割が明確になる
・構造の検討がスムーズになる

といった効果が得られます。

一方で、ここで多くの設計者がぶつかるのが、
「どの構造を選ぶべきか」という判断です。

このときに大きく影響するのが、
設計者の“引き出しの多さ”です。

ここでいう引き出しとは、
機能を実現するための構造の選択肢のことです。

同じ機能であっても、
どのような構造で実現するかという選択肢を多く持っているほど、
より適切な判断ができるようになります。

本講座では、こうした「構造の引き出し」についても触れながら、
機能を形につなげる考え方を学んでいきます。

つまり、機能分解によって“考える土台”を整え、
そこに設計者の引き出しを掛け合わせることで、
設計の質はさらに高まります。

そして何より、
設計の“考え方”そのものが整理されます。

まとめ:設計の質は「分解と選択」で決まる

機能設計において最も重要なのは、
機能をどれだけ適切に分解できるかです。

分解が曖昧であれば設計も曖昧になり、
分解が明確であれば設計も明確になります。

そして、そこに適切な選択肢を持つことで、
設計の質はさらに高まります。

次回(第3回)は、
「分解した機能をどのように構造へとつなげるのか」
その具体的な考え方についてお届けします。

設計を“見える形”へ。
今回の内容が、設計をより論理的に組み立てるための
ヒントになれば幸いです。

ものづくりウェブ事務局