第3回:多面的な視点での設計判断 ─ 品質・安全・環境・コストを見据える力

投稿日:2025年10月07日

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さて、本日が連載シリーズの最終回となりました。

前回のメルマガでは、構想設計を進めるうえで欠かせない「プロジェクト全体を見通す力」──つまり“計画と管理の視点”についてお伝えしました。

製品の設計にとどまらず、

・誰が、いつ、何をするのか
・どんな順序で進めるのか
・どのようなリスクに備えるべきか

といった“進め方そのもの”を設計することの重要性を掘り下げました。

そして今回は、構想設計で常に問われる「品質」「安全性」「環境」「コスト」といった設計判断の基準について、より実践的な視点から解説していきます。

構想段階でどのような観点を持って設計判断を行うかによって、その後の詳細設計や製造現場での成果は大きく変わります。

最終回となる今回は、構想設計に求められる“多面的なものの見方”と、それを実務にどう活かすかについて、事例を交えてお届けします。

「技術力」だけでは通用しない時代に

設計者としての経験を重ねていく中で、多くのエンジニアは

「図面を正確に描ける」
「3D CADを自在に扱える」
「構造設計や強度計算ができる」

といった専門スキルを磨いていきます。
もちろん、これらは設計者にとって基本であり、なくてはならない能力です。

しかし、実務の中で構想設計という“上流工程”を任されたとき、多くの方が気づくのは、「これまでの“作業としての設計”では通用しない」という壁です。

構想設計は、単に形を考えるのではなく、企画や要求に対して、品質、安全性、環境、コストなどの要素をバランスよく考慮し、合理的かつ説得力ある設計方針を導き出す“思考のプロセス”です。

現代のものづくりを取り巻く環境は、年々複雑化・厳格化しています。

製品安全に関する国際規格の適用、環境規制への対応、価格競争の激化、サプライチェーンの分断など、設計者が意識しなければならない視点は増える一方です。

こうした背景を踏まえると、構想段階から「品質・安全・環境・コスト」という4つの観点を同時に見据え、全体最適を図る判断力が、今まで以上に重要となってきます。

ストーリー:品質トラブルの真因は“視点の欠如”

ある中堅メーカーでの話です。新製品の量産直前、最終試作で振動による破損トラブルが発生。ユーザーの使用環境によっては、製品寿命が半減するという問題が見つかりました。

設計図面にミスはなく、また解析結果も規格を満たしていたにもかかわらず、実際の使用条件、温度変化や地面からの微振動、および予期しないユーザーの扱い方によって設計想定を超える負荷が加わっていたのです。

原因は明白でした。
設計者が「図面を描くこと」に集中しすぎて、「どう使われるか」「どこで使われるか」という“使用環境”の視点が不足していたのです。

このような事例は決して珍しくありません。
むしろ、構想設計における視野の狭さが招く典型例といえるでしょう。

設計者が持つべき「4つの視点」とは?

構想設計において意識すべき代表的な視点は以下の4つです。

1. 品質視点:ユーザーの満足を想像する

品質は「壊れないこと」だけでなく、「使いやすさ」や「使ったときの安心感」も含みます。

ユーザーがその製品を使ってどう感じるか、その体験まで想像することが“品質の本質”です。

特に重視されるのは信頼性です。
いくら性能が優れていても、すぐに壊れてしまってはユーザーを満足させられません。

信頼性を高めるための設計手法には、以下のようなものがあります。

・モジュール設計
・フールプルーフ設計
・冗長設計
・フェールセーフ設計
・フォールトトレランス設計

また、製品の信頼性を評価・検討する際には、以下の手法が役立ちます。

・FMEA(故障の予測)
・DRBFM(設計変更に伴うリスク確認)
・FTA(トラブル原因を論理的に追う)

2. 安全視点:すべての人の命を守る設計へ

安全性とは、「事故が起きないようにすること」です。
ですが、それだけではありません。

「もし異常が起きたときでも、人命や財産に重大な影響がないようにする」ことも含まれます。

たとえば、小さな子どもが誤って触れたときに大きなケガをしないか、異常動作が起きたときに自動で停止する機能はあるか、などの配慮が求められます。

安全設計には、PL法(製造物責任法)、ISO12100(機械の安全設計指針)といった法的・国際的なルールも関わります。設計者としての安全意識が、企業の信頼を守るカギになります。

3. 環境視点:未来を見据えた設計選択

「この設計が、環境にどう影響するか?」

この問いは、今やあらゆる設計に付きまとう重要なテーマです。

設計の選択一つで、省エネ性能やリサイクル性は大きく変わります。また、使い終わった製品をどう処理するかまで考える「ライフサイクル設計」も注目されています。

RoHS指令(有害物質使用制限)やREACH規則(化学物質の使用管理)など、環境規制の基準をクリアする設計は、取引先からの信頼を得る上でも重要です。

環境対応は「オプション」ではなく、「設計者の責任」へと変化しているのです。

4. コスト視点:選ばれる設計、続けられる製品

良い設計でも、コストが合わなければ採用されません。逆に、コスト削減だけを意識すると品質や安全に悪影響が出ます。

重要なのは、「どこにコストをかけ、どこで抑えるか」を判断する視点です。そのためには、どこにどのくらいのコストがかかるのかを見積る力も重要です。

たとえば、設計にどのくらいコストをかけるのか、製造にはどのくらいコストがかかるのか、営業や管理も含めて、コストを考える必要があります。

構想段階でコストに目を向けることで、開発全体の効率と持続性が向上します。

多面的視点が未来を変える

構想設計とは、単なる作業工程ではなく、設計者の“意思と判断”が問われる領域です。

図面を描く手を止め、少し遠くから全体を見通す、それができる設計者は、組織から信頼され、周囲からも頼りにされる存在になります。

– 若手設計者のロールモデルになる
– 社内レビューで中心的な役割を果たす
– 製品開発全体の流れをリードする

こうした未来は、「多面的な視点」を意識し、設計に向き合うことで自然と近づいてきます。

この学びを、実務で活かすために

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